せっかく鍵を変えたのに

私が住んでいる地域はかつて治安が良く、外出する時でも家のカギを掛ける必要はなかったのだが、近頃は空き巣や訪問詐欺が増え、カギを掛ける家が多くなった。
私の家は築年数の古い木造住宅で玄関も木で出来ている、空き巣犯は侵入するのに手間取る家は嫌うらしいが、木で出来ている玄関はノコギリ木で簡単に壊すことが出来る、玄関のカギだけ変えても意味がないのでは?
木で出来ている玄関を鉄製のものに変えても、ガラスを割られて侵入することは出来る、空き巣犯に狙われたら最後、そうなる前に「この家は防犯意識が高い」と思わせるために、鍵を最新式なものに変えることにした。
私の家の近隣宅も木造住宅で玄関は木で出来ている、このような家は田舎では珍しくない。
他の家も私の家と同じで、かつては外出する時にわざわざ鍵は掛けなかった。
治安が悪くなったこともあるが、鍵を変えてまで鍵を掛けるようになったのは、田舎に嫁いでくれた嫁さんのためでもある。
息子の嫁さんは都会育ち、大切に育てられた嫁さんを守るのは義父である私の務め。
近隣宅がどんな鍵に交換したのか見させてもらおう。
鍵を変えた近隣宅へ見に行くと、「Aさん宅と同じカギに変えた」と言うので、Aさん宅へ伺うと「うちはBさん宅と同じカギ」と言われた。
Bさん宅のカギはCさん宅のカギと同じ、田舎では買い物できる場所が限られるため、どこの家にも同じようなものがあるのは珍しくはないように、交換したカギまで皆同じタイプの鍵だった。
どの家も保守的な考えで玄関の鍵を変えたが、代々続く家を保ちながら守る保守な考えは悪くない、私の家も皆と同じタイプの鍵に変えた。
せっかく新しい鍵に変えたのだから鍵を掛けなくては意味がないのだが、長きにわたる習慣は簡単には変えられない、家族全員分のスペアキーは作ってもらったのだが、私の家で鍵を掛けるのは嫁さんだけ。このことも他の家と同じ。