まぬけな彼

主人とまだ結婚する前、車で出かけた時の事です。 当時、主人が乗っていた車はマニュアル車でレトロな雰囲気が特徴の車種でした。その為、窓も今時には珍しい手動。鍵も「スマートキー」や「キーレスキー」等とは程遠く、しっかりと鍵穴に鍵を差し込むタイプでした。 夕ご飯を食べ、車に乗って帰ろうとしたその時でした。 「車の鍵がない!!」と、彼。ポケットや、カバンの中を探しましたが見つからず。「もしかしたら?!」と車の中を覗き込んだ彼。「あーやっちゃたー」私は何を言っているのか分からず、とにかく近づいて一緒に車の中を覗いてみました。 なんと、探していた車の鍵はエンジンをかけるところに刺さったまま。当時私も車を所有していましたが、車の鍵は外からかけるのが当たり前。鍵を抜かずにドアを開ければ「ピー」と鳴って、鍵をつけたまま車を駐車するなどあり得ない事だったので、状況を飲み込むまでに時間がかかりました。 彼の車は、ロックをかけた状態でドアを閉めれば外からは開かない構造になっていたのです。そう、思い出してみれば、昔子供の頃に住んでいたアパートの鍵は同じでした。基本的には鍵を使ってかけますが、時々無意識に閉めてしまって鍵を持って出かけなかったため、家族の誰かが帰ってこないと入れない。なんて経験をしました。 さて、どうやってドアを開けよう。スペアキーを取りに帰れる距離ではありません。とりあえず、私たちは近くにガソリンスタンドを探しました。少し離れた場所でしたが、なんとか見つけ相談すると、薄くて長い金属の棒のような物を持ってきてくれ、窓からそれを突っ込み鍵を開けてくれようとしました。何度か挑戦してくれましたが、結局開ける事は出来ませんでした。どうしようと、悩んでいたその時、私たちが居た場所の近所に同僚が住んでいて、たまたま通りがかったのです。相談すると、その同僚のお父さんはJAF会員で、お父さんからJAFを呼んでもらい、すぐに開けてもらうことができました。 今ならスマホですぐに調べたり、加入している自動車保険のサービスがあったりと、色々な解決手段で乗り切れると思いますが、あの当時は何もなく。だからこそ、同僚との偶然の遭遇や、そのお父さんの優しさ等、今でも忘れられない出来事となっています。